ローランドウイスキーの特徴と代表的な蒸溜所
スコッチウイスキーの生産域のひとつであるローランド地方は、スコットランドの南東部に位置する地域で、エジンバラやグラスゴーなどの大都市を含む広大な低地が広がっています。この地は、穏やかな田園風景が特徴で、かつてはスコッチウイスキーの中心地として栄えていました。特に18世紀には、ローランドがスコッチウイスキーの90%を締める主要な生産地であり、当時の蒸溜所の多くがこの地に集中していました。
グレーンウイスキーの先駆者?
1707年、スコットランドとイングランドの合併によりウイスキーの課税が強化されたスコッチ全体のウイスキー製造に大きな影響を及ぼしました。この重税から逃れるためスペイサイド含むハイランド地方のウイスキーの業者は密造を選びましたが、ローランド地方ではエジンバラやグラスゴーといった大都市を擁しており、酒税を取り締まる役人の目が届きやすかったため、密造が難しい状況にありました。その結果、コストを抑えるために大麦の代わりにトウモロコシなどの穀物を使用したグレーンウイスキーの製造が始まりました。これがグレーンウイスキーの先駆けだったと言われています。
グレーンウイスキーの製造にあたり連続式蒸溜機を導入し、安く大量にグレーンウイスキーを造ることに成功しましたが、この頃のグレーンウイスキーは無個性で風味がなく、品質が低かったので、単体で飲まれることはほとんどありませんでした。そのためローランドの蒸溜所は次々と閉鎖されることになります。
ローランド・モルトの特徴
ローランド・モルトの特徴は、その軽やかな酒質にあります。一般的なスコッチウイスキーは2回蒸溜ですが、ローランドのウイスキーは3回蒸溜を行うことでより澄んだクリアでライトな味わいが生まれます。その結果、繊細で花のような香りとメープルシロップのような甘みを持つ、女性的でデリケートな風味が特徴です。
現在、ローランドにはグレンキンチー、ブラドノック、オーヘントッシャンといった著名な蒸溜所があります。これらの蒸溜所は、それぞれ個性的なウイスキーを生産しており、ローランド・モルトの特徴を存分に楽しむことができます。また、最近ではダフトミル、アイルサベイ、キングスバーンズなどの新しい蒸溜所が続々と登場しており、ローランドウイスキーの未来を担っています。
代表的なローランドの蒸溜所
オーヘントッシャン蒸溜所
オーヘントッシャン蒸溜所は、ゲール語で「野原の片隅」という意味を持つ名前が特徴で、3回蒸溜を行うことで軽やかでキレのある口当たりを生み出しています。中でも「スリーウッド」という銘柄は、3種の樽で3回熟成させた贅沢な逸品で、その飲み心地は滑らかで、高級な木箱に長く保管されていたチョコレートのような濃厚な香りを楽しめます。
グレンキンチー蒸溜所
グレンキンチー蒸溜所は、エジンバラ近郊に位置し、「スコットランドの庭園」とも称される穀倉地帯で生産されるウイスキーが特徴です。干し草のような香ばしい香りと、レモンや花の香りが立ち上る軽やかなウイスキーで、和食との相性も抜群です。
ブラドノック蒸溜所
ブラドノック蒸溜所は、スコットランドでもっとも南に位置する蒸溜所として知られています。創業は1817年で、そのフルーティーな香りとマーマレードパイのような味わいが特徴です。生産量が少なく、希少なウイスキーとして知られています。
キングスバーンズ蒸溜所
ウィームス家によって設立された新進気鋭の蒸溜所で、2014年から稼働しています。ローランドらしい繊細で華やかなフルーティーさを持ち、パイナップルの酸味や柔らかなモルティーな旨味が特徴です。
グラスゴー蒸溜所
100年ぶりにグラスゴーに誕生したシングルモルト蒸溜所で、革新的な手法でウイスキーを製造しています。2015年に初の樽詰めが行われ、「1770」というウイスキーがリリースされました。
ダフトミル蒸留所
ダフトミル蒸溜所は、ファイフ近郊に位置するファーム・ディスティラリーで、ダフトミル農場で生産された大麦を使用しています。そのクオリティの高さから、ウイスキーファンにカルト的な人気を誇ります。
アナンデール蒸溜所
ローランドの南端に位置し、1830年に設立された後、約100年ぶりに操業を再開した蒸溜所です。伝統的な手法で製造されるウイスキーは、非常にオーソドックスな味わいが特徴です。
ローランドウイスキーの特徴まとめ
つてはハイランド地方を凌ぐほど多くの蒸溜所が存在し、一時代を築いたローランドの広大な地。この地域はグレーンウイスキーの発祥の地として知られ、多くのグレーンウイスキー工場やブレンド業者が集まっています。
シングルモルトは、個性に欠ける、軽くて薄いといった否定的な評価を受け、日本でもあまり親しまれていない印象が強いです。
近年では新ローランド地方は、新たな蒸溜所が次々と登場し、ウイスキー産業の復興に向けて注目を集めています。その背景には、現在のローランドで造られているウイスキーが非常に高品質であるという事実があります。
長い歴史を持つこの地域のウイスキーが再び世界にその存在感を示す日が近づいていることでしょう。