アイリッシュウイスキーの特徴とおすすめアイリッシュウイスキー
「スコッチ」「バーボン」「カナディアン」「ジャパニーズ」・・・そして「アイリッシュ」。世界5大ウイスキーのうちの一つであるこの「アイリッシュウイスキー」ですが、スコッチやジャパニーズウイスキーと比較するとあまり馴染の無い方も多いのではないでしょうか。実は近年、じわじわと人気が高まっているアイリッシュウイスキーの特徴についてまとめました。
アイリッシュウイスキー誕生の背景
アイリッシュウイスキーはウイスキーの中でもとても古くから存在しており、明確な始まりについては記されていませんが、12世紀ごろにはウイスキーの原型となる蒸留酒が既にアイルランドで造られていたと言われています。スコットランドと並んでウイスキーの発祥地という説もあります 。
世界のシェア60%をもったアイリッシュウイスキー
アイリッシュウイスキーが全盛期を迎えたのは18世紀中頃です。この頃には、アイルランド全域に何百という蒸留所が存在していました。当時はスコッチウイスキーよりも生産量が多く、世界のウイスキー市場の60%以上をアイリッシュウイスキーが占めていたとされています。
しかしアイリッシュウイスキーの人気は二度の世界大戦や独立戦争の影響、さらに主な輸出先であったアメリカで禁酒法が導入されてしまったことで、大きな打撃を受け、徐々にその人気の火は消えていくことになります。かつて多く点在していた蒸留所も、1920年代には「ブッシュミルズ蒸留所」と「ミドルトン蒸留所」の2つだけになりました。その後、世界のウイスキーのトレンドはスコッチへと切り替わっていきました。
アイリッシュウイスキーの復活
一気に生産者が減ってしまったアイリッシュウイスキーですが、残ったブッシュミルズ蒸留所とミドルトン蒸留所の味わいや品質が劣化してしまった訳ではありません。この2箇所の蒸溜所は、閉鎖してしまった蒸留所から引き継いだ原酒、銘柄と共に、アイリッシュウイスキーの伝統を守り続けて行きました。(その後1972年にブッシュミルズ蒸留所はミドルトン蒸留所と合併)
そして20世紀後半には一度閉鎖に追い込まれた蒸留所が復活し、また新たな蒸留所も増えて行き、現在アイリッシュウイスキーの生産者として50を超える蒸溜所が稼働しています。
アイリッシュウイスキーとは?
アイリッシュウイスキーとは、アイルランドおよび英国の構成国の1つである北アイルランドで造られるウイスキーのことを指します。その歴史は12世紀まで遡るといわれ、ウイスキーの代名詞とも呼ばれるスコッチウイスキーと、「どちらが先にウイスキーを造ったか」で起源を争うほどの深い歴史を持ちます。
アイリッシュウイスキーはその製法が定義づけられており、法律で定められている主な条件は以下のとおりです。
- 穀物類を原料とすること
- 麦芽に含まれる酵素により糖化し、酵母の働きによって発酵させていること
- 蒸溜時のアルコール度数は94.8%以下であること
- 木製樽に詰めること
- アイルランド島(アイルランド共和国、または英国領北アイルランド)の倉庫で3年以上熟成させること
これらの条件を満たしたものだけが、「アイリッシュウイスキー」と名乗ることができます。ちなみに、ボトリングを行う場所は定められていません。
アイリッシュウイスキーの特徴
アイリッシュウイスキーの最大の特徴は、発芽させたノンピートの大麦麦芽(モルト)と、未発芽の大麦などを原料に、3回蒸溜を行うことです。
スコッチウイスキーは通常、単式蒸溜機で2回蒸留を行うのに対し、アイリッシュウイスキーは単式蒸溜機で3回蒸溜を行います。3回蒸溜することで、アイリッシュウイスキーに特徴的なクリアな味わいが生まれます。しかしながら3回蒸溜はアイリッシュウイスキーの必須条件ではないため、近年は3回蒸溜を行わない銘柄が増えています。 また、アイリッシュウイスキーの味わいはどちらかというと雑味がなくクリアで穏やかな味わいのものが多いのが特徴です。スコッチウイスキーのようにモルトを乾燥させるのに基本的にはピート(泥炭)を使わないため、力強い風味を持つものは少ないかもしれません。また、未発芽の穀物を原料とすることで、穀物の味わいがより強く感じられるウイスキーに仕上がりやすくなります。
なお、アイルランドではウイスキーの綴りは「Whiskey」ですが、スコットランドでは「e」が入らず「Whisky」と書きます。
アイリッシュウイスキーの種類
大きなくくりでアイリッシュウイスキーといっても、いくつかの種類があります。
シングルポットスチルウイスキー
最も伝統的な製法です。ノンピートのモルトと未発芽の大麦などを原料に、単式蒸溜機で蒸溜を3回繰り返して造られます。穀物由来の香味が豊かで、口当たりはクリーミーなのが特徴です。
原料には大麦のほか、オーツ麦(オート麦)や小麦、ライ麦などが使用されることもあります。
モルトウイスキー
原料は100%モルト。単式蒸溜機で通常3回(または2回)の蒸溜で造られます。シングルポットスチルウイスキーとは異なり、ピートで乾燥させたモルトを使用することもあります。
2回蒸溜の場合は3回蒸溜よりも原料の力強さが残ります。3回蒸溜の方がより精製度高く蒸溜されるため、2回蒸溜したものよりも比較的すっきりした味わいに仕上がる傾向にあります。蒸溜回数の異なる銘柄を飲み比べしてみるのも楽しみのひとつですね。
グレーンウイスキー
モルトやトウモロコシ、未発芽の大麦などの穀類を原料に、連続式蒸溜機で造られます。味わいはすっきりしていてクセがないのが特徴です。主にブレンデッドウイスキーを作るために使用されるため、グレーンウイスキー100>#/span###のアイリッシュウイスキーを飲む機会は少ないかもしれませんが、グレンダロウ(グレンダロッホ)やティーリングなど新興蒸溜所のなかには、シングルグレーンウイスキーを生産しているところもあります。貴重なアイリッシュのグレーンウイスキーをBarなどで見つけたら是非試しに飲んでみて下さい。
ブレンデッドウイスキー
ポットスチルウイスキーまたはモルトウイスキーと、グレーンウイスキーをブレンドして造られるのがブレンデットウイスキー。3種類すべてをブレンドすることもあります。近年の主流はこのタイプのウイスキーで、バリエーションも豊富です。