ウイスキーに1滴水を加えると香味が変わる「ワンドロップ」とは?香りが花開く科学的原理とおすすめの加水方法
「ウイスキーに水を1滴たらすだけで香りが花開く」。こんな事を聞いたことはありませんでしょうか?
ウイスキー好きの中にはストレートウイスキーにスポイトやティースプーンで少し水を加えて香りの変化を楽しむ人もいます。ではウイスキーに水を垂らすとどう変化するのでしょうか? 香りが花開くとは一体?
今回はウイスキーと少量の水で起こる変化を見ていきましょう。
ウイスキーに数滴水を垂らすとどうなるの?
「ワンドロップ」と呼ばれるウイスキーの飲み方
ウイスキーにスポイトやティースプーンなどを使って1滴ずつ常温の水を垂らす飲み方は「ワンドロップ」と呼ばれたりします。
オーセンティックバーなどでウイスキーのストレートを注文し少し飲んだ後にバーテンダーの方が「少し水足してみます?」なんて聞かれた・・・なんて体験があったりしませんでしょうか。これは数滴の水を加えて「ワンドロップ」を楽しむためのものです。
水を加えるとウイスキーの味わいと香りが変化する
ストレートのウイスキーに数滴の水を加えると隠れた香りが引き出されて、より豊かで繊細に感じられるようになるといわれています。いわゆる「香りが開く」というやつです。
スコッチなどのシングルモルトウイスキーはじめ、ウイスキーはストレートやハイボールで飲むものというイメージがありますが、少量の水を加えることでよりウイスキーの香味の魅力を引き出すことができます。
なぜ水を加えると変かが起きるのか?
ウイスキーを加水すると香りが開くといのは感覚的には分かりますが、総じて「寝ている香りが起き上がる」や「つぼみ状態だったものが花開く」といった風に抽象的な概念の説明で止まってしまう場合が多いです。
ウイスキーに水を加えることで風味が増すという事は科学的に証明されています。このウイスキーと水による香味の変化に関する論文は2017年にスウェーデンのリンネ大学が発表したものです。全てを説明するとかなり長く難しい内容になってしまうので、掻い摘んで重要な部分を説明します。全文が気になる方は下記より英語の原文が読めますので是非ご一読ください。↓
『Dilution of whisky – the molecular perspective』
https://www.nature.com/articles/s41598-017-06423-5
ウイスキーの中でもピートを焚いて麦芽を乾燥させる際に発生するスモーキーな風味を与える有機分子「グアイアコール」に注目し、グアイアコールと水とエタノールの混合液中での反応をシミュレーションしたものです。
結論から言うとグアイアコールはエタノールと優先的に結びつき、水とは結びつきにくいことが判明しました。
エタノール度数が59%以上だとこのグアイアコールは液体全体に分散した状態となり、それ以下の度数だと液体の上方、つまり液面近くに浮上することが分かったそうです。
また、この傾向はアルコール度数27%の時まで継続し、より表面にグアイアコールが集まるようになるとのことです。つまり、加水によりある程度までアルコール度数が下がることで、それだけウイスキーの液面に香味成分(今回の場合はグアイアコール)が集まるので、より香りを感じやすくなるとのことです。
この傾向は似たような性質の有機分子(=香り)にも見られます。
例えばウイスキーなどに存在する香味で有名な有機分子としては
- リモネン=レモンの香り
- マングネート=パイナップルの香り
- ゲラニオール=薔薇の香り
- バニリン=バニラの香り
等です。
一般的にウイスキーは、アルコール度数が40~50%程度になるように加水調整されたうえで瓶詰めされます。この瓶詰までの加水においてもウイスキーの風味を高める効果があります。
今回のワンドロップなども同じ作用で、グラスに注いだストレートウイスキーに数滴の水を加えることで、香りの成分が液面に集まることでグラス内でより風味が増しておいしく感じられるとされています。
ウイスキーの「ワンドロップ」をたのしむコツ
ワンドロップに使用する水はウイスキー本来の味を損ねにくい軟水の天然水(ミネラルウォーター)が良いとされています。また、仕様するグラスは香りを逃がしにくいチューリップ型のテイスティンググラスを用いると良いでしょう。
たった1滴でウイスキーの香りが奥深く変化する「ワンドロップ」。
皆さんも是非自分のお気に入りのウイスキーでその変化を楽しんでみて下さい。
Saketryおすすめのテイスティンググラス
このテイスティンググラス「コスモス」は、長年、テイスティングをおこなってきた経験の中で、さらに高機能なグラスを作りたいとの思いで開発しました。コンセプトは「高いノージング機能をそなえながらも、飲みやすさを犠牲にしないこと」。
一般的にテイスティンググラスの形は、飲みやすさが考慮されているとノージングの機能はダウンし、反対にノージング機能を高めると飲みにくくなってしまいます。従来のウイスキー用のテイスティンググラスには、香りと味の双方を十分に楽しめるものが少なく、若干の不満がありました。 テイスティンググラス「コスモス」は、グラスの胴の部分を大きく膨らませることで、アロマの保持力を高めつつ、首と胴のつなぎ目のエッジを適度になめらかにすることによってノージング機能と飲みやすさの両立を実現しました。
豊かに香りを味わい、スムースな飲み口を楽しむ。
宇宙の広がりを思わせる、そんなテイスティングタイムをお届けします。