ジャパニーズウイスキーの定義とは?
今や世界5大ウイスキーのひとつとして列挙されるようになったジャパニーズウイスキー。では果たしてジャパニーズウイスキーの定義とは何でしょうか?
原料?製法?熟成場所?
そんな疑問を解決するため、2024年7月時点でのジャパニーズウイスキーの定義を分かりやすく見ていきましょう。
「ジャパニーズウイスキー」の定義と3つのポイント
ではまず皆さんが一番知りたいであろうジャパニーズウイスキーの定義をまとめます。
「ジャパニーズウイスキー」と表示する場合には、下記の要件を満たす必要があります。
原材料
原材料は、麦芽、穀類、日本国内で採水された水に限ること。なお、麦芽は必ず使用しなければならない。
製法
製造
糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと。なお、蒸留の際の留出時のアルコール分は95度未満とする。
貯蔵
内容量700リットル以下の木製樽に詰め、当該詰めた日の翌日から起算して3年以上日本国内において貯蔵すること。
瓶詰
日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は40度以上であること。
その他
色調の微調整のためのカラメルの使用を認める。
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『ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準』
重要なポイントは3つです。
ポイント1
原材料は麦芽、穀類、日本国内で採取された水に限ること。麦芽は必ず使用すること。
日本国内の麦芽を必ず使用するとした事により、米などを原料とし樽熟成した焼酎は「ジャパニーズウイスキー」と表示する事はできません。
ポイント2
糖化、発酵、蒸留は日本国内で行うこと
これによりスコッチやバーボンなど外国産の原酒をブレンドしたものは「ジャパニーズウイスキー」と表示する事はできません。
ポイント3
700リットル以下の木樽で、3年以上、日本国内において貯蔵すること。
樽での熟成をしていなかったり、3年未満の熟成の物をジャパニーズウイスキーと表示する事はできません。また、例えばスコッチウイスキーではオーク樽での熟成と定義されていますが、ジャパニーズウイスキーでは木樽とする事で、桜や杉、檜、栗などの日本ならではの木材での熟成が可能となっています。
いつから定義されたの?
実はこのジャパニーズウイスキーの定義が制定されたのは2021年4月1日のこと。日本でのウイスキーの歴史は100年以上あり、竹鶴政孝がスコットランドのウイスキー製造技術を学び、日本に持ち帰った1920年代に遡ります。しかしながらちゃんとした定義が造られたのは意外と最近なのです。
定義される以前のジャパニーズウイスキーの基準は非常に曖昧でした。原料や製法について明確な基準がなく、とりあえず日本国内で製造されたウイスキーが「ジャパニーズウイスキー」と認識されていました。そのため、麦芽以外の原料や、その他のアルコールが使用されていました。また日本で製造されたウイスキーだけでなく、海外から輸入された原酒をブレンドしたものも「ジャパニーズウイスキー」とされることがありました。そのためスコッチなどと比べると非常に曖昧で「これじゃいかん」という声が多くあがり2021年のジャパニーズウイスキーの定義の施行に繋がりました。
誰が定義したの?
「ジャパニーズウイスキー」の定義を制定したのは「日本洋酒酒造組合」です。日本洋酒酒造組合は国税庁の外郭団体でもあり、日本国内で唯一の洋酒メーカーの団体であり、酒造免許を有する102社(2024年7月時点)が加盟しており、大手メーカーだけでなくクラフト蒸溜所まで多くのウイスキーメーカーが加盟しています。
2024年7月時点では森本昌紀新氏(サントリー取締役常務執行役員スピリッツカンパニー社長)が理事長を務めています。
今回の「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する自主基準の制定に際しては、加盟している企業の中でも特にウイスキー業界を牽引している5社でワーキンググループを編成し、約4年間にわたり議論がなされたそうです。
課題とジャパニーズウイスキーの今後
この規定ははあくまでも日本洋酒酒造組合の内規です。そのため、組合に加盟していなければ規定に縛られることはありませんし、違反しても罰則規定がないのです。
そういった課題は今後どのような方向に改善されていくのか注視する必要があります。しかしながら、このジャパニーズウイスキーの定義が制定されたことは100年を誇る日本のウイスキーの歴史の中で、大きく画期的な出来事に違いはありません。