グレンファークラスについて

ゲール語で「緑の草の生い茂る谷間」を意味するグレンファークラスは、スコットランド・ハイランド地方スペイサイドで1836年に創業しました。スコットランドの蒸溜所の半数以上が集結しているこの地は、清涼な空気と良水に恵まれ、大麦の主産地であり、また燃料となるピートも豊富に産出する、ウイスキー造りに最適な土地です。 1865年にグラント家が蒸溜所を購入して以来、6世代にわたり家族経営を続けるとともに、伝統的なスペイサイドスタイルによるウイスキー造りにこだわりつづける、現在では数少ない蒸溜所です。時代に左右されない信頼の味わいは、世界中のウイスキー愛好家を魅了し続けています。

グラント家の6世代

 
 

初代
ジョン・グラント
John Grant

1865年6月8日、グラント家が511ポンド19シリングで蒸溜所を購入しました。初代のジョンは農業を営んでおり、家畜(アバディーン・アンガス牛)の放牧用に購入した土地に蒸溜所も含まれていました。

二代目
ジョージ・グラント
George Grant

1870年から父親のジョンと一緒にウイスキー造りを始め、間もなくして英国植民地向けに輸出を開始します。また1880年には、現在も当時の姿のまま使われている、ダンネージ式の最初の熟成庫が完成しました。

三代目
ジョージ・グラント
George Grant

2代目のジョージ・グラントの急逝後、若干16歳で家督を引き継ぎ、1897年に蒸溜所に近代的な設備を導入するなど、生産拡大を推し進めました。しかしその翌年、外部のパートナーと共同経営していた会社が倒産します。1890年代のウイスキーバブルに便乗しようと持ち掛けられた儲け話しでしたが、結果的に莫大な借金を負うことになりました。蒸溜所の経営を再建するまでに15年も要した苦しい経験から、今日まで家族経営を継続しているグラント家の独立精神が誕生しました。

四代目
ジョージ・S・グラント
George S. Grant

52年という長期間オーナーを務めました。 彼がオーナーに就任した1950年代は、ウイスキー業界が急成長した時期でした。ブレンデッドウイスキーの急激な需要の高まりを受けて、ブレンド用原酒を供給していたグレンファークラスも、1960年には蒸溜器を2基から4基に増やすことにより、生産量を倍増させます。しかし、1968年以降はブームが去り、ブレンド用原酒の需要が激減。グレンファークラスも、大手ブレンデッドメーカーから契約を切られてしまいます。 以前からこうした状況を予見し、蒸溜所の未来は自社ブランドの確立にあると考えていた4代目ジョージは、ブームの終焉前から自社ボトリング用の原酒のストックを増やしていました。業界の再編が進みどの生産者も大幅な減産を行う中、グレンファークラスは時流に逆らい、将来を見据えて増産を進めます。1976年には蒸溜器を4基から6基に増やし、現在に至る生産体制を整えます。 今日でも古い原酒を豊富にストック出来ているのは、4代目のお蔭です。グレンファークラスはスコットランドの蒸留所の中で、最も豊富なヴィンテージ・シングルモルト・ウィスキーを提供しています。

五代目
ジョン・LS・グラント
John LS Grant

スコットランド銀行に3年間、更にティーチャーズウイスキーで3年間勤務した後、1973年から家業であるグレンファークラス蒸溜所の経営に参画しました。2002年に5代目に就任するまでの約30年間、4代目と二人三脚で蒸溜所を経営します。 ジョンは、自らがセールスマンとなり世界中を旅して輸出販路を広げ、今日の基礎となる販売網を築きます。また、毎年スペインに行き、グレンファークラスの熟成に欠かせないシェリー樽の安定調達の手段も確保しました。 ジョンが企画して2007年にリリースされた、シングルヴィンテージ・シングルカスク・シリーズ(ファーストリリース:vt.1953-1994)の“ファミリーカスク”は、現在ではグレンファークラスの代名詞にもなっています。独立した家族経営を続けるグレンファークラスだからこそ成しえる、非常にユニークなシリーズです。

六代目
ジョージ・S・グラント
George S Grant

スコットランドの蒸溜所で研修を積んだ後2年間香港の輸入代理店に勤務して、2000年から経営に参画。それまでの経歴を生かしながら、現在はセールス・ディレクターとして、新商品の開発や様々なプロモーションの責任を担っています。1年の半分は世界中を飛び回り、現在90か国以上に輸出されているグレンファークラスの、さらなる輸出拡大を推し進めています。

製法

グレンファークラスの仕込み水は、蒸溜所の背後に聳え立つスコットランド最高峰のベンリネス山から湧き出る清廉な湧き水です。山の中腹に独自の水源を持っており、良質な湧き水を安定して調達しています。 また原料となるモルトは、ピートを一切焚かないノンピートモルトを使用しています。 一貫してこだわるのが、今では非常に珍しくなった、ガスバーナーによる直火炊き蒸溜です。かつて、より効率的で経済的な間接加熱も実験しましたが、それではグレンファークラスの個性が出せないと結論付け、昔ながらの直火炊き蒸溜を続けています。現在、スペイサイド最大級、3対6基のボール型直火炊き蒸溜器が稼働しています。 1865年にグラント家が蒸溜所を購入して以来、6世代にわたり家族経営を続けるとともに、伝統的なスペイサイドスタイルによるウイスキー造りにこだわりつづける、現在では数少ない蒸溜所です。時代に左右されない信頼の味わいは、世界中のウイスキー愛好家を魅了し続けています。

直火炊き蒸溜と並んで強いこだわりを持つのが、シェリー樽での熟成です。 非常に高価なシェリー樽ですが、フィニッシュのみの使用は一切行わず、100%シェリー樽熟成を続けています。シーズニングのシェリーは、全ての種類を試した結果、最終的に行きついたのがオロロソシェリー。30年以上前から契約するスペインの生産者から、安定して良質なオロロソ樽の供給を受けています。 また、1stフィルから4thフィルまでのオロロソ樽を使い分けることによって、さまざまな味わいを生み出し、幅広いラインナップを提供しています。10年ではリフィルの使用比率を増やし、ニューメイクの持つフルーティーさを、また25年では1stフィルをふんだんに使用し、濃厚なダークチョコなどの深いコクと余韻を生み出します。 熟成庫のスタイルも、100年以上前から変わりません。約10万樽のストックは、蒸溜所に併設された背の低いダンネージ式熟成庫で熟成されています。40を数える熟成庫のサイズはまちまちですが、共通しているのは最大3段までしか樽を積まないこと。ベンリネス山から吹き降ろす風の影響もあり、天使の分け前は年間0.05%と非常に低く、ゆっくりと熟成が進みます。グレンファークラスの個性の源は、熟成環境への変わらないこだわりにもあります。